子どもの貧困調査研究コンソーシアム発足-子ども・若者貧困研究センターの新たな取り組み

首都大学東京子ども・若者貧困研究センター
特任研究員 川口遼

 

「7人に1人の子どもが貧困状態」と言われるように、日本社会における子どもの貧困は、深刻な状況にあります。私たち、子ども・若者貧困研究センターには、この状況の改善に学術的に貢献しようと考えた研究者たちが集っていますが、主要な業務の1つに自治体が子どもの貧困の実態把握を目的に行う「子どもの生活実態調査」への協力があります。この調査には、保護者と子どもの両方を対象としているため、世帯や保護者の状況と子どもの状況を関連付けて把握することができるという強みがあります。これまでセンターでは、東京都をはじめとする多くの自治体の調査に関わり、結果に基づく政策提言を行ってきました。その内容は各自治体の子育て関連計画に反映され、新たな施策として実現しているものもあります。
このように、子どもの貧困に関する政策展開において、「子どもの生活実態調査」の結果はすでにエビデンスとして活用されています。しかしながら、この調査が自治体単位で行われていることが、学術的な知見の蓄積という点でも、政策エビデンスという点でも大きな障害となっています。例えば地域ごとの産業構造や世帯構造の違い、特定の政策の有無などによって、世帯が貧困に陥るメカニズムや、貧困が子どもに与える影響に違いがあることを想像に難くありません。子どもの貧困をより深く理解するためには、複数の自治体による調査結果を比較検討したり、同時に分析することが求められます。
そこで、同じように子どもの生活実態調査に関わる研究機関に呼びかけ、本年8月に「子どもの調査研究コンソーシアム」を発足させました。今後は全国に散らばる大学がコンソーシアムとして自治体との共同研究体制を構築し、自治体の枠を超えて子どもの貧困の実態を明らかにして参ります。今後も子ども・若者貧困研究センターならびに子どもの貧困調査研究コンソーシアムの活動にご関心をお持ちいただければ幸いです。